講義内容
[第33回]2013年4月13日(土) あさ5:30~6:00放送
こころの絆を科学する
講師/東北大学加齢医学研究所 教授
川島 隆太 氏

こころの絆とは
それは「こころ」と「こころ」の結びつきだろうと考えます。「こころ」自体非常にあいまいで定義ができていませんのでそこで科学になりにくいと言う事はあるのですが、「こころ」と「こころ」が結びつくためには少なくともこの3つがあるかなと思います。
  1. 相手の「こころ」を理解する
  2. 自分の「こころ」を相手に伝える
  3. 互いの「こころ」を互いに理解しあう
要は「コミュニケーション」が絆の元。自分がどう感じているかを表現するのはツイッターなどでトレーニングは十分にされていて、相手がどう感じていようと自分の事を表現することは自分の心を相手に伝えることです。
つまり特に大切なのは1と3だとおもっています。だからここら辺を研究テーマにできないかなというのが私たちの考えでした。
「心の理論」
これは他者の心を理解するためのものと位置付けられています。他者が自分とは異なった信念・意図を持っていることを理解する能力を言います。3~4歳にならないとこの「心の理論」というものは発達しないと言う事も分かっています。
この理論が脚光を浴びたのは自閉症の方々が心の理論が上手く出来ていないというところからです。自閉症の方々は「心の理論」がうまく働いていないがゆえに他者がどういう意図や信念を持っているのか理解する能力にかけています。だから集団を形成する社会の生活の中で上手くフィットできないという説明がなされています。

この心の理論と言うものをどのように調べているのか、実際に使われている有名なテストがあります。
心の理論ストーリー課題
4コマ漫画です。子どもがドアのノブに手を伸ばします。背伸びをしてもノブに手が届きません。傘を見つけました。そこで4コマ目に何をするか、というものです。
心の理論を持っている方であればこの子はドアを開けたいので、ドアノブに傘をひっかけてドアを引っ張ると考えるわけですが、自閉症の子どもたちはこの子が何をしたいかという意図が分からないので、傘を見つけた、傘は雨が降る時にさすものだから雨が降っているんで外出するんでしょうと「2」だと考えるわけです。我々意識せずに「1」と考えるのですが、心の理論が発動しているから「1」を選ぶことができます。
もう1つ対象条件として、心の理論を必要としない、でもストーリーを考えなくてはいけいない課題です。
非「心の理論」ストーリー課題
物理的な現象を問う事が多いです。例えば海辺で砂のお城を作って遊んでいると。すると波がやってきてしまった。波が砂のお城にかぶったら次どうなるか、と言うものです。これは単なる物理現象ですから、この子がどう感じているかは別として、波が引けば砂のお城はなくなるという1をだれしもが選ぶ事ができます。これは心の理論を必要としません。
相手の気持ちを理解している時に脳のどこを使うのか
それを画像化できるのですが、主に使う場所は1つは脳の前頭前野の内側の部分です。それから頭の側頭葉と呼ばれる所に何カ所かあります。いろんな研究を合わせて行くと側頭葉の前の方と後ろの方にどうも重要な場所があると分かってきました。我々は相手の気持ちを理解する時に脳の3カ所を主に使っていて、それで相手の意図を理解しているということがこの研究で分かります。
やり取りの部分まで脳の計測をしてみたらどうなるか
光トポグラフィという装置を使って実験をやりました。母子で会話をしてもらったのですが、顔を見ての会話をしていると心の理論を含めて子どもの脳はわーっと働くのですが、電話で話しをしたりすると心の理論の領域なんて働かない。言葉を作りだす領域しか働いていない。なんてこともデータとして見えています。今の情報化社会の中では鍵になるのではないかと思っていて、今はともかく皆さん楽で便利であれば何でもいいと思っている方にお金を出すもんですから、人と会うよりは電話で済ませましょう、電話するよりはメールで済ませましょう、という風にどんどんどんどん人の生活が変わっていくのですけれども、実際にそうしていくと脳を使わなくなっていく、と。特に電話をしている時は他社の気持ちを理解する領域がほとんど働いていませんと、他者の気持ちを理解しないで言葉を発しているということは果たしてコミュニケーションなのでしょうか。というような疑問に行きあたってしまします。 コミュニケーションのツールとして様々なメディアの開発を私たちは支援をしているのですが、それはコミュニケーションをダメにするためにやっている行為なのかもしれないな、とこういう研究から我々思っています。
脳の社会の窓口
前頭前野の前の真ん中の場所。ここがどうも私たちが社会との窓口になっている脳の場所である。他者の気持ちを理解し、他者に気持ちを伝えるというその場所のコア、鍵になっている場所であると言う事に気が付きました。
ではそこの働きをもっともっといろんな場面で計りましょうということで、非常に小型の頭にクリップを挟むだけの脳の計測装置を作るということをしました。おでこの部分にあたる箇所から近赤外光という光が出て、脳の計測をする事ができます。脳活動に関係のない成分の心拍、呼吸変動による雑音などを除いたり、測定系事態の雑音を除いたりしてデータを綺麗にして相関計算をします。それは専門的なのですが、波の揺らぎのパターンが似ているか似ていないか科学的に検査する方法で確かに同じパターンかどうかと言う事を調べる事をしています。
これがもし本格的に動き出すと、私たちは人と人とが心と心の絆が結ばれているかどうか、その絆の具合がどの程度かと言うのを数値化するのが可能になってきそうだというところまで我々の技術は進んで来ています。

これを私たちはいろんな方面に産業応用しようと言う事で、産学連携を考えているんですけれども、例えば今までのものづくりというのは、全て個人の幸せのためのモノづくりでした。教育もそうでした。戦後の主力はそちらに向かっています。結果なにが起こったかと言うと、社会のモラルが失われて言った。個人の幸せだけ考えていたら、社会のモラルなんて形成される訳がないのです。
私たちが今提案したいのはそれは違うだろうと、人と言うのは他社と関わり合っての人で、社会を形成するものであると、人と関わり合う、良い社会を作るということは言葉では分かっていても、実際に数値化することが難しかったのでそこが研究の対象にならなかったんじゃないかと。今人と関わると言うのが数値化できるようになってきたので、モノづくりや教育の方向性も逆に人といかに関わり合いを良くするかと言う方向に変えていけないかと言うのがこれから私たちが東北大学から主張していきたいモノづくりのあり方です。
音楽で脳の反応のパターンを感じる
音楽はある時間の中での音のゆらぎをキャッチして我々は心地よいと感じたり、心地よくないと感じたりしているのです。では脳の反応自体を音楽のようにしてしまったら何が起こり、何が分かるんだろうかということの研究を始めています。
嫌な写真を見ている時の音と、かわいらしい写真を見ている時の6人の学生の脳の反応の音を比べると、専門家にいわせると、ネガティブな写真を見ている時は音が非常に動きやすく音の繰り返しのパターが短い。それに対し、可愛い写真を見ている時はゆったりとした長いフレーズが小さい変化の中で起こりますよ、と言うのが分かっています。
ですからいろんな感情状態によっておそらく表現されるものは違ってくると言う事が分かっていて、これはまだ新しい話で、これしかでていません。これからこういう事を突き詰めて行ってもっと面白いことができないかなと思っています。例えば、自分自身で表現がうまくできない人もこういうものを通して他者に気持ちを表現できるようになったりなんていう事もあるのかな、なんて夢としては思っています。
東北大学加齢医学研究所 スマート・エイジング国際共同研究センター