
プログラムのご案内

- タイトル
- 「アグニの神」
- 著 者
- 芥川 龍之介
- 朗 読
- 浅見博幸アナウンサー
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第1回放送
2010年8月27日
支那の上海の或町です。昼でも薄暗い或家の二階に、人相の悪い印度人の婆さんが一人、商人らしい一人の亜米利加人と何か頻に話し合っていました。「実は今度もお婆さんに、占いを頼みに来たのだがね、――」…
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第2回放送
2010年9月3日
亜米利加人が帰ってしまうと、婆さんは次の間の戸口へ行って、「恵蓮。恵蓮」と呼び立てました。その声に応じて出て来たのは、美しい支那人の女の子です。が、何か苦労でもあるのか、この女の子の下ぶくれの頬は、…
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第3回放送
2010年9月10日
その日のかれこれ同じ時刻に、この家の外を通りかかった、年の若い一人の日本人があります。それがどう思ったのか、二階の窓から顔を出した支那人の女の子を一目見ると、しばらくは呆気にとられたように、ぼんやり立ちすくんでしまいました。…
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第4回放送
2010年9月17日
「何か御用ですか?」婆さんはさも疑わしそうに、じろじろ相手の顔を見ました。「お前さんは占い者だろう?」日本人は腕を組んだまま、婆さんの顔を睨み返しました。「そうです」「じゃ私の用なぞは、…
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第5回放送
2010年9月24日
「ここは私の家だよ。見ず知らずのお前さんなんぞに、奥へはいられてたまるものか」「退け。退かないと射殺すぞ」遠藤はピストルを挙げました。…
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第6回放送
2010年10月1日
「遠藤サン。コノ家ノオ婆サンハ、恐シイ魔法使デス。時々真夜中ニ私ノ体ヘ、『アグニ』トイウ印度ノ神ヲ乗リ移ラセマス。私ハソノ神ガ乗リ移ッテイル間中、死ンダヨウニナッテイルノデス。…
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第7回放送
2010年10月8日
その時あの印度人の婆さんは、ランプを消した二階の部屋の机に、魔法の書物を拡げながら、頻に呪文を唱えていました。書物は香炉の火の光に、暗い中でも文字だけは、ぼんやり浮き上らせているのです。…
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第8回放送
2010年10月15日
「日本の神々様、どうか私が睡らないように、御守りなすって下さいまし。その代り私はもう一度、たとい一目でもお父さんの御顔を見ることが出来たなら、すぐに死んでもよろしゅうございます。…
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第9回放送
2010年10月22日
しかし透き見をすると言っても、何しろ鍵穴を覗くのですから、蒼白い香炉の火の光を浴びた、死人のような妙子の顔が、やっと正面に見えるだけです。その外は机も、魔法の書物も、床にひれ伏した婆さんの姿も、まるで遠藤の眼にははいりません。…
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第10回放送
2010年10月29日
「さあ、正直に白状おし。お前は勿体なくもアグニの神の、声色を使っているのだろう」さっきから容子を窺っていても、妙子が実際睡っていることは、勿論遠藤にはわかりません。ですから遠藤はこれを見ると、さては計略が露顕したかと思わず胸を躍らせました。…
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第11回放送
2010年11月5日
その内に部屋の中からは、誰かのわっと叫ぶ声が、突然暗やみに響きました。それから人が床の上へ、倒れる音も聞えたようです。遠藤は殆ど気違いのように、妙子の名前を呼びかけながら、全身の力を肩に集めて、何度も入口の戸へぶつかりました。…
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第12回放送
2010年11月12日
「あら、嘘。私は眠ってしまったのですもの。どんなことを言ったか、知りはしないわ」妙子は遠藤の胸に凭れながら、呟くようにこう言いました。…
※一部の作品には、現在において不適切と思われる表現が含まれている場合がありますが、
原作の内容を尊重し、原作通り朗読させていただいております。
原作の内容を尊重し、原作通り朗読させていただいております。
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