プログラムのご案内
- タイトル
- 「婚期はずれ」
- 著 者
- 織田作之助
- 朗 読
- 浅見博幸アナウンサー
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第1回放送
2014年6月6日
友恵堂の最中が十個もはいっていた。それが五百袋も配られたので、葬礼の道供養にしては近ごろよくも張り込んだものだと、随分近所の評判になった。いよいよ配る段になると、聞き伝えて十町遠方からも貰いに来て、半時間経つと、一袋も残らず、葬礼人夫は目がまわった。…
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第2回放送
2014年6月13日
そうした肩身のせまさがあってみれば、しぜんそんな道供養もひとびとにはうなずけた。それかあらぬか、葬式が済んで当分の間、おたかは五升の飯を炊き、かやくにしたり、五目寿司にしたりして、近所へ配った。…
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第3回放送
2014年6月20日
…父親の生きていたころ、三度義枝に縁談があったことはあった。相手は呉服屋の番頭、瓦斯会社の勤人、公設市場の書記と、だんだんに格が落ちた。父親はいつのときも賛成も反対もせず、つまりは煮え切らず、ぼそぼそ口の中で呟いているだけだったが、おたかはまるで差出でて、仲人こ向い、格式が違うことあれしまへんか。…
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第4回放送
2014年6月27日
次の縁談があるまで半年待った。こんどの談は永助に来て、先方は表具屋の娘だったから、これも永助の意嚮を訊かぬうちに有耶無耶になった。仲人はしかし根気良く三度運んだのだった。…
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第5回放送
2014年7月4日
ところが、纒ると見えて、いざ見合いという段になって、いきなりおたかは断ってしまった。仲人はちょっとあきれたが、怒った顔も見せず、姉はんをさし置いて妹御をかたづける法もなかったと筋を通して、御縁は切れたわけでもないと苦労人だった。…
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第6回放送
2014年7月11日
けれども、次に半年ほど経ってから二十の久枝に談があったとき、矢張り義枝を差し置いてということが邪魔した。久枝は北浜の銀行へ勤めに出て、太鼓の帯に帯じめをきりりとしめ、赤い着物に赤い下駄で姉たちとはかけはなれた派手な娘だった。…
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第7回放送
2014年7月18日
路地に年中洋服を着た若い男が母親と移って来て、花井といい、株屋の外交員をしているとのことだった。小柄で浅黒くてかてか光った皮膚をして、顔はとがった形にこぢんまり整い、長屋住いには惜しい男だと、おたかは眼をきょろきょろさせたが、もうその日から煮たき物を花井の家へ持って行った。…
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第8回放送
2014年7月25日
八年経つと、五十七歳のおたかはどういうわけかめっきり肥えて、息苦しそうに立ち働いた。子供たちの年を考えれば不思議なほどの肥え方だと、あきれて近所の人は見た。永助は口髭を生やして四十歳だった。…
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第9回放送
2014年8月1日
銭湯の向いにミヤケ薬局があり、そこの主人は永助と同じ年で町会の幹事にあげられていた。主人の妻が三人の子供を残して死ぬと、途端におたかは駆けつけて、はた目もおかしいほどいろいろと気を配って手伝った…
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第10回放送[最終回]
2014年8月8日
秋。朝日理髪店一家は北田辺の郊外へ移った。こんどのところはあんた、郊外でんネ、前に川が流れてましてな。良え風吹きまんねんぜとおたかはいいふらした。そらえらい良えとこイあんた、…
※一部の作品には、現在において不適切と思われる表現が含まれている場合がありますが、
原作の内容を尊重し、原作通り朗読させていただいております。
原作の内容を尊重し、原作通り朗読させていただいております。
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