
プログラムのご案内

- タイトル
- 「銀座」
- 著 者
- 永井荷風
- 朗 読
- 浅見博幸アナウンサー
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第1回放送
2014年12月12日
この一、二年何のかのと銀座界隈を通る事が多くなった。知らず知らず自分は銀座近辺の種々なる方面の観察者になっていたのである。唯不幸にして自分は現代の政治家と交らなかったためまだ一度もあの貸座敷然たる松本楼に登る機会がなかったが、…
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第2回放送
2014年12月19日
建込んだ表通りの人家に遮ぎられて、すぐ真向に立っている彼の高い本願寺の屋根さえ、何処にあるのか分らぬような静なこの辺の裏通には、正しい人たちの決して案内知らぬ横町が幾筋もある。…
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第3回放送
2014年12月26日
自分は折々天下堂の三階の屋根裏に上って都会の眺望を楽しんだ。山崎洋服店の裁縫師でもなく、天賞堂の店員でもないわれわれが、銀座界隈の鳥瞰図を楽もうとすれば、この天下堂の梯子段を上るのが一番軽便な手段である。…
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第4回放送
2015年1月9日
われわれの生活は遠からず西洋のように、殊に亜米利加の都会のように変化するものたる事は誰が眼にも直ちに想像される事である。然らばこの問題を逆にして試に東京の外観が遠からずして全く改革された暁には、…
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第5回放送
2015年1月16日
銀座界隈はいうまでもなく日本中で最もハイカラな場所であるが、しかしここに一層皮肉な贅沢屋があって、もし西洋そのままの西洋料理を味おうとしたなら銀座界隈の如何なる西洋料理屋もその目的には不適当なる事を発見するであろう。…
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第6回放送
2015年1月23日
銀座の表通りを去って、いわゆる金春の横町を歩み、両側ともに今では古びて薄暗くなった煉瓦造りの長屋を見ると、自分はやはり明治初年における西洋文明輸入の当時を懐しく思返すのである。…
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第7回放送
2015年1月30日
現代の日本ほど時間の早く経過する国が世界中にあろうか。今過ぎ去ったばかりの昨日の事をも全く異った時代のように回想しなければならぬ事が沢山にある。有楽座を日本唯一の新しい…
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第8回放送
2015年2月6日
これに反して停車場内の待合所は、最も自由で最も居心地よく、聊かの気兼ねもいらない無類上等の 〔Cafe'〕である。耳の遠い髪の臭い薄ぼんやりした女ボオイに、義理一遍のビイルや紅茶を命ずる面倒もなく、…
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第9回放送
2015年2月13日
自分は動いている生活の物音の中に、淋しい心持を漂わせるため、停車場の待合室に腰をかける機会の多い事を望んでいる。何のために茲に来るのかと駅夫に訊問された時の用意にと自分は見送りの入場券か品川行の切符を無益に買い込む事を辞さないのである。…
※一部の作品には、現在において不適切と思われる表現が含まれている場合がありますが、
原作の内容を尊重し、原作通り朗読させていただいております。
原作の内容を尊重し、原作通り朗読させていただいております。
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