乾癬とは、どういう病気なのでしょうか。症状や治療法、セルフケアについて、医師の菅井順一先生に解説していただきます。治療を続けていく上で欠かせない、医療従事者とのコミュニケーションのポイントについても教えていただきました。
乾癬って、どんな病気?
日常生活で気を付けること
医療従事者とコミュニケーションをとるコツ
Advice
乾癬って、どんな病気
乾癬はうつらない
原因はよくわかっていないのですが、体の中の免疫機構のバランスが崩れて起こる病気と言われています。ですから、乾癬は他の人にうつることはありません。しかし、乾癬という病気を知っている人が少ないため、「かんせん」と聞くと、感染症、うつる病気と誤解されやすいのが問題となっています。周りの方に正しく知っていただかないと、乾癬の患者さんの生活の質は落ちてしまいます。また、乾癬の症状は良くなったり悪くなったりを繰り返すので、目先のことだけではなく、中長期的な治療とケアが大切です。
フケのようなものができる理由
乾癬の症状が起こりやすい場所として、顔、頭、手、性器などがあります。通常の皮膚は時間をかけて新しい皮膚をつくっていくのですが、乾癬の場合、治療をしないとどんどん新しい皮膚を作り、皮膚が剥がれ落ちていきます。皮膚が過剰に作られてしまうと皮膚が厚くなったり、ガサガサが強くなったり、鱗屑(りんせつ)というものが雪のように積もることがあります。免疫的なものが過剰に反応してしまい、炎症につながります。
皮膚だけの病気じゃない
爪や関節にも症状が出てくることもあります。爪は水虫の症状のように厚くなったり、へこんだり。関節の症状は手が特徴的ですが、背骨やアキレス腱など、いろいろな関節に症状が出ることがあります。また、乾癬があると他の病気と合併しやすくなり、予後に影響することが少しずつわかってきています。乾癬の患者さんで気になる変化があったときには、医師に相談してください。
日本ではまだ知られていない乾癬という病気
日本における乾癬の患者数は40万人から50万人ほどで、1,000人のうちに4、5人と言われています
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一方、乾癬の患者数が多いアメリカでは、20人に1人ぐらいが乾癬を発症していると言われています
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そのため、アメリカでは乾癬のことを知っている人が多いです。また、日本では女性より男性の方がやや多いですが
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、世界的に見ると男性と女性の割合はほぼ同じとなっています。一度乾癬にかかると簡単には治りづらく、発症したときから、医師を含めたまわりの人間がどうサポートしていくかが大切だと言えます。
*1 Kubota K, et al. BMJ Open. 2015;5:e006450.
*2 照井 正 他:臨床医薬, 30: 279–285, 2014.
*3 Smith B, et al. J Am Acad Dermatol. 2025;92(4):917–919.
*4 Takahashi H, et al. J Dermatol. 2011;38:1125–1129.
治療法について
以前と比べて、乾癬の治療方法は増えてきています。塗り薬に加えて、飲み薬や注射薬などもあり、どれもめざましく進歩しています。紫外線による光線療法もあります。外用薬一つとっても効かないと思わずに、新しいお薬が出てきたらぜひ興味を持っていただきたいですし、いろんな選択肢があることをぜひ知っていただきたいです。
Advice
日常生活で気を付けること
肌への刺激を少なくしましょう
ケブネル現象といって、乾癬の患者さんは、何もない正常の皮膚でも刺激を加えると乾癬が出てきてしまいます。薬を塗るときはゴシゴシ塗るのではなく、優しくスッと塗りましょう。
肌を清潔に、保湿を心がけましょう
乾燥すると肌がダメージを受けやすくなります。最近は夏も冷房で乾燥しやすいので、保湿が欠かせません。
紫外線には免疫反応を抑える作用があります
紫外線には乾癬を改善する作用※がありますが、当たりすぎは逆効果のため注意が必要です。太陽の光には赤外線も含まれており、これにより温められると痒みや炎症が強くなるので注意してください。
※ 森田明理ほか.乾癬の光線療法ガイドライン.日皮会誌.2016;126:1239-1262.
運動や食生活の改善で、体重をコントロールしましょう
食べすぎ飲みすぎは乾癬を悪化させることがあるので注意が必要です。バランスの良い食生活を心がけてください。
Advice
医療従事者とコミュニケーションをとるコツ
悩み、困り事を共有することが大切
乾癬によって、症状だけではなく、生活でのお困り事が色々と増えます。日常生活を普通に送りたい、治療期間が長い、病院に行くのも大変、人生をもっと楽しみたい、通常の余暇の活動をしたい、など。こうして挙げてみると、乾癬の患者さんは特別なものを要求されているわけではなく、まず日常生活を普通に戻したいと思っていることを、私たち医師は考えなければいけません。
患者と医師が考えているポイントはズレがある
治療に対する希望や優先順位は患者さんによって異なり、患者さんと医師でも考え方は異なります。例えば、症状の感じ方については、医師は症状がある範囲の面積で重症か軽症かを判断してしまいがちですが、患者さんにとっては範囲が狭くても重症だと感じる方もいます。そうした認識のギャップを埋めるためにも、医療従事者と患者さんとの対話が大切なのです。
認識のギャップを埋めてSDMを実施
Shared Decision Making(SDM)という言葉があります。医学的な考え方だけではなく、患者さんの趣味や嗜好、ライフスタイルを踏まえて、患者さんと医療従事者が共同で治療方針を決めましょうという意味です。治療を続けていくなかで、治療法が合わない、効果が不十分だと感じる、もっと良くしたいと思うことがあったら、相談していただきたいです。その相手というのは医師だけではなくて、看護師さん、薬剤師さん、家族の方も含めて、みんなでより良い乾癬治療につなげていければと思います。